+ちょっとした趣味+ |
「ヒマだぁ〜・・・・」 ある日の事 飼い主さんが仕事でいないので、フェンリさんはとてもヒマしているようです ゴロゴロと島に寝そべってみたり、ムシクイさんと戯れたりしますが・・・ それでもすぐに飽きてしまいます そこで、フェンリさんはふと思いました ―――ヴィオルやユーラはヒマな時、どうしているのだろう? 悩みだしたら、居ても立ってもいられません フェンリさんは呪文を唱えると、猛ダッシュで飛び出していきました ― ユーラさんの島 ― 綺麗な夜空に浮かぶユーラさんの羽根の島は、フェンリさんのお気に入りの場所です 「ユーラー!!」 勢いよく飛んできたケマリのフェンリさんに、本を読んでいたユーラさんは、彼を見ずに雷の呪文を解き放ちます 「甘い!!」 学習能力がついたのでしょう フェンリさんは素早い飛行で、ユーラさんの放った雷を避けます しかし! そこはさすがユーラさんというべきでしょうか 続けて唱えておいたハンマーの魔法が、見事フェンリさんにヒット! ペッタンコになったフェンリさんが、ヒラヒラとユーラさんの島に舞い降ります 「雷を避けたのは褒めますが、まだまだツメが甘いですよ、フェンリ」 読んでいた本を閉じ、ユーラさんはにっこりと微笑みます 「うぅー・・・次は負けないもん!」 薄っぺらになったフェンリさんは、なんとか大きく息を吸い込み、身体をポンっと膨らませました ツンツンのケマリモ復活です 「ところで、フェンリ。何か御用ですか? ご飯の時間にしては、まだ早すぎますし・・・」 「そうそう。本来の用事忘れるとこだった」 小さな光に包まれ、ポンっとフェンリさんはヒトになります そのままトコトコとユーラさんの傍によると、そのお膝にちょこんと座り彼を見上げました 「ユーラは、ヒマな時って何して時間潰してるの?」 首をかしげて見上げてくるフェンリの頭を撫でながら、ユーラさんは答えます 「ヒマな時は大概、本を読んでいますよ」 「本・・・って、これだよね」 ユーラさんの横に置かれた本を取り、フェンリさんはペラペラとめくります しかし文字だらけ、そして難しい漢字だらけで、フェンリさんはすぐに頭が痛くなりました 「・・・飽きる」 「そうでしょうね」 むぅ・・・と口唇を尖らせているフェンリさんを見て、ユーラさんはにこやかに微笑みます 「なんかいい時間の潰し方ってないかなぁ〜・・・」 「何か好きなことをやればいいんですよ」 「好きなこと・・・かぁ・・・」 一通り頭をめぐらせるが、どうも思いつかないようです フェンリさんは、ユーラさんのお膝からピョンと立ち上がると、ケマリの姿に戻りました 「ヴィオルのとこ行ってくるね!」 意図を察したユーラさんが、小さく頷きます 「いってらっしゃい。気をつけるんですよ」 「はーい!」 ユーラさんに手を振り、フェンリさんはまた呪文を唱えます 目指すはヴィオルさんの島です! ― ヴィオルの島 ― ヴィオルさんの島は、少し殺風景 あまりゴチャゴチャしたものを置きたくないらしく、極めてシンプルな島です 「ヴィオル〜!」 突如空に現われたケマリを横目で確認した後、ヴィオルさんは持っていた剣を納めました どうやら彼は、自主訓練をしていたようです 「どうした?」 空中で前方三回転ひねりをしながら、ヒトになる呪文をフェンリさんは唱えます 「とぅ!!」 ユーラさんの島とは違い、地面がしっかりとしているヴィオルさんの島では、フェンリさんの空中技もしっかりと決まりました 「随分上手くなったな」 「日々の特訓だーね」 少し自慢げに胸を張っているフェンリさんを、ヴィオルさんは優しく見下ろします そんなヴィオルさんの優しさが、フェンリさんは大好きなのです 「それで、何か用か?」 「あ、そうそう。ヴィオルはヒマな時、何してるのかなーと思ってさ」 島の真ん中に腰を下ろしたヴィオルさんの横に、フェンリさんもちょこんと座ります じーっと見上げてくるフェンリさんから視線を外し、ヴィオルさんは思考を巡らせているようです 「そうだな・・・時間がある時は大体、素振りとか・・・銃を撃っているかな」 「銃!? 放浪にきた人とかに当たったら危ないよ!!」 「あぁ、大丈夫。弾は入ってないから」 ぽんっと重たいヴィオルさんの銃をいきなり手渡され、一瞬フェンリさんは落としそうになりますが しっかりと受け止め、マジマジと見つめています 「弾入ってないのに、どうやって訓練してるの?」 「別に訓練しているわけじゃない。撃つ感覚を忘れないようにしているだけだ」 「へぇ〜・・・」 ヴィオルさんが前に構えていたのを思い出し、フェンリさんは記憶を頼りに構えてみました フェンリさんには大きくて重い銃は、なんだか彼が持つと本物のように見えません 「そうだ。フェンリ・・・」 なにやら銃に手を置き、ヴィオルさんは呪文を唱えます やがて、唱え終わった呪文はすーっと銃に吸い込まれ、少しキラキラと輝きました 「撃ってごらん」 「へ?」 「大丈夫だ。弾は入ってないから」 「あ・・・うん」 緊張しながらも、フェンリさんはもう一度銃を構え、引き金を引きました ―――パァッーン!! ど派手な音が響き渡り、銃口から鳩や紙ふぶきが飛び出しました そう、ヴィオルさんはクラッカーの呪文を唱えていたのです 「・・・びっくりしたーーーーーーーーー!」 目をパチクリしているフェンリさんを見て、ヴィオルさんは声をかみ殺して笑っています 「あー・・・まだドキドキしてるよ。でも面白かった!」 「そうか。もしまた撃ちたければ言え。撃たせてやる」 「わーい! ありがとぉ〜ヴィオル!!」 満面の笑みを浮かべるフェンリさん ヴィオルさんに銃を返し、はっと気付きます 「そうだ。おいらは銃を撃ちに来たんじゃなくて、いいヒマ潰しの方法を聞こうと思ってきたんだよ!」 本来の目的を思い出し、フェンリさんはヴィオルさんを見上げます 「・・・ヒマ潰しか。ユーラには聞いたのか?」 「ユーラは本を読むって。本、見せてもらったけど難しすぎてダメだった」 「それはそうだろうな・・・」 「ねぇ〜ヴィオル。どうすればヒマ潰せると思う?」 少し考え、ヴィオルはあぁ・・・とフェンリを見下ろします 「趣味を作ればいいんじゃないか?」 「・・・趣味?」 「そう。自分の好きなこと。何かないのか?」 「趣味・・かぁ〜・・・」 むむぅーと唸りながら、フェンリさんは頭を抱えます 「どこかを散歩するのでもいいし、技を磨くのでもいい」 「あ、そうだ。おいら、今ひとつ練習したいことがあるんだ!」 「ほぉ・・・」 なにやらその場にピョンと立ち上がると、フェンリさんはコホンと一つ咳払いをして・・・ それはそれは透き通った声で歌を歌い始めました 穢れなく純粋な声は、スーっと心の中に入り込み、静かに響き渡ります いつの間に来たのか、少し驚いた表情で聞いているヴィオルさんの横に、ユーラさんが座りました フェンリさんは目を瞑って歌っているからか、気付いていないようです 「・・・すごく綺麗な声ですね」 小さく呟くユーラさんに、ヴィオルさんも素直に頷きます やがて、歌い終えたフェンリさんは、ユーラさんの姿を見止めると、わぁ!と大げさに後ずさりました ビックリしているフェンリさんに、ユーラさんとヴィオルさんの拍手が贈られています 「驚きました。フェンリがこんなに歌が上手だったとは・・・」 「あぁ。悪くない」 「へ・・・えへ・・・えへへへへ〜」 小さな身体を真っ赤にして、フェンリさんは照れ笑いをしています 「フェンリ。趣味が見つかったんじゃないですか?」 そう問うユーラさんに、フェンリさんは大きく頷きました 「おいら、もっと色々な歌を覚えたいし、色々歌いたい! 練習すれば上手くなるかなぁ?」 「なりますよ。やる気と、できると思う力が強ければ、それは必ず成功します」 「歌を歌っている間は時間を忘れるんだろう? その歌声なら、放浪で立ち寄った人も聞いていってくれるかもしれないな」 「・・・ホント!? うわぁ〜ますますやる気が出てきた!!」 フェンリさんは、すぐさまポン!とケマリに戻ると、お空に羽ばたきます 「おいら、帰るね! 練習する!! 色々、ありがと」 お礼の投げキッスを二人に贈り、フェンリさんは自分の島へ帰っていきました 残された二人は、互いの顔を見合い呟きます 「フェンリにあんな特技があるとは思いませんでした。いい趣味が見つかってよかったですね」 「あぁ、そうだな。たまに歌ってもらうとしよう」 さて、島に着いたフェンリさんは、早速歌を歌い始めます もう少しお腹に力入れたほうがいいかな? もうちょっと高い声でないかなぁ? 悩みながらも、フェンリさんはとても楽しそうです 同居しているムシクイさんも、その笑顔には何も言えず・・・ただフェンリさんの歌声を聞いています 歌う事を覚えたフェンリさんは、また一歩大人になったようでした―――― おしまい |
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ちょっとしたお題シリーズ第3段 『趣味』をお送りました! 今回は書き方をわざと変えてみましたが・・・どうですか? 物語風というか、童話風というか・・・ というか、これ趣味なのか、何なのか・・・ またお題クリアしていなそうで、心配しております・・・はい。 というわけでね、フェンリの歌 子供だからきっと純粋で透き通った歌声だろうなーと それにケマリは鳥ですからね! 鳥だったら歌も上手いんじゃないかと・・・ あっ! それならユーラも鳥だから上手いのかな・・・ ユーラは上手そうだな・・・フェンリとは違う大人の色気・・・(ぉぃ あ〜しかし、フェンリ主体の話だと、ホントほんわかしてて書きやすいです。 ユーラ&ヴィオルのときと全然違いますね! さて次回は・・・ 『怖い』というお題ですね。 『怖い』といったら、あの人しかいませんよね・・・ ユーラ様主体のお話になりそうです。 あ、でもそろそろヴィネガ様にも登場してもらうかな。 ではまた〜 小説トップへ戻る? |
