+ちょっとした秘密+



「ヴィオも随分逞しくなりましたね」


 今までヴィオルを狙って落ちていた雷が、その声と同時に止む
 ヴィオルは荒い息をそのままに、声の主であるユーラを見た

 本を片手に呪文を唱えていたらしい
 ヴィオルの島においてある掲示板に寄りかかって座っているユーラは、丁寧に栞を挟むと大きく伸びをした


「・・・お前は、よく本を読みながら正確に雷を落とせるな」
「見なくても大体の位置はわかりますよ。パークと違って小さな島ですしね」
「そうか・・・」


 特に何か言うわけでもなくポツリと言葉を漏らすと、ヴィオルも軽く身体を捻った


「さて・・・戦闘訓練はその辺にしませんか? 私も少し疲れました」
「あぁ、悪かったな。随分と長い時間、つき合わせてしまった」
「いつもの事ですから。私は大して気にしていませんよ」


 そう言ってにっこりと微笑むユーラの腕を掴み、ヴィオルは力任せに立ち上がらせる
 そのままユーラの細い身体を抱きしめ、その肩に顔を埋めた

 ユーラも少し汗ばんだヴィオルの背中に腕を回し、微笑した


「今日は珍しくヴィオが積極的ですね」
「疲れると甘い物が欲しくなるだろう? あれと同じだ」
「・・・私は、甘い物ですか?」


 覗き込む様に見上げてくるユーラにキスを落とし、ヴィオルは軽く笑う


「甘すぎるくらいだ」
「それはそれは・・・糖分の摂り過ぎに注意してくださいね」
「・・・気をつけよう」


 ついばむようなバードキスを繰り返しながら、ユーラの背を撫でていたヴィオルの手が不意に止まる
 その不自然さに、されるがままになっていたユーラも軽く耳を澄ませて・・・納得した


「小さなお邪魔虫の登場ですね」


 ユーラから身体を離し、ヴィオルは島の上にどかっと座る
 なんとなくその不機嫌さが出て、ユーラは小さく笑った

 そして・・・


「ヴィオルー!! ユラー!!」


 何も知らずに飛び込んできたケマリのフェンリ
 その姿が見えた途端、ヴィオルは事前に唱えておいた雷を解き放った

 まさに青天の霹靂とばかりに、晴れた空に一筋の雷が走り、今しがたやってきたばかりのフェンリに直撃する


「ふぎゃああぁぁぁ!!」
「・・・ご愁傷さま」


 真っ黒に焦げて、ヴィオルの島にポトンと落っこちたフェンリに、ユーラは軽く手を合わせる


「それにしても・・・ヴィオも意外と子供なところがあるんですね」


 本来こういうイタズラをするのはユーラのほうなのだが・・・
 ユーラの言葉にもヴィオルは顔を背けたまま黙っている


「・・・何よ、何よ、何なのよー!!!」
「フェンリ、キャラ変わってますよ」


 身体についたススを身震いで払い落としながら、フェンリは大声で叫ぶ
 突然、理由もなく、しかもユーラではなくヴィオルに雷を落とされ、さすがのフェンリも動揺しているらしい


「お・・おいら・・・なんか悪いことした・・・?」


 顔を背けたまま視線を合わそうとしないヴィオルに、フェンリはポン!とヒトになると、少しビクつきながらも
 飛ばずにトコトコと近づいてみる
 あと少しで彼の前に着く・・・といった時、ヴィオルの低い声と共に目の前に剣が突きつけられる


「これ以上近づくな」
「う・・あ・・・・ゆぅらぁあああ!!」


 半泣きになりながら、猛ダッシュでフェンリはユーラに抱きつく
 小さなケマリをヨシヨシと撫でながら、ユーラはヴィオルににっこりと微笑む


「そんなにフェンリを虐めないで下さい」
「・・・フン」
「ユラユラ! おいら何したの!? 何でヴィオル怒ってるの!?」


 涙を浮かべた半狂乱のフェンリに、ユーラはどこから取り出したのかクッキーを渡す


「フェンリは少し、場の空気が読めなかっただけですよ」
「場の・・・空気?」


 もらったクッキーを少しかじりながら、フェンリはヒクついた声でユーラを見上げる


「えぇ」
「どう・・すれば・・場の空気って・・読める・・の?」
「そうですねぇ。じゃあ、こうしましょう。私の島かヴィオルの島に当人がいなければ、フェンリはその場でいないほうに
 紙飛行機を飛ばしてみてください」
「紙・・飛行機・・・?」
「そうです。そして、5分待っても返事が来なかったら諦めて、また後で来てください。
 5分以内に返事があれば、来ても構いませんよ」


 なんだか理不尽な事を言うユーラだが、先ほど恐い思いをしたフェンリは疑わずにコクコクと頷いている


「それで・・場の空気って・・読める・・・?」
「次第にわかってくると思いますよ」
「うん・・・でも、ユーラとヴィオルは何してるの?」
「それは知らなくていいことだ」


 いつの間にか真後ろに立ちフェンリを見下ろしているヴィオル
 気付いていなかったフェンリは思い切りビクりと身体を震わせた


「まぁそれは、フェンリには言えない秘密なんです」
「・・・秘密」
「えぇ。秘密です」


 にっこりと微笑むユーラと、じっと見下ろしているヴィオルに、フェンリはそれ以上何も言えずに固まった


「さぁ、話は終わりだ。フェンリには悪いが、今日は出て行ってもらおうか」
「えっ・・・? えっ?? えぇーーー!?」


 フェンリの言葉など待たず、ヴィオルは追い出しの呪文を唱える
 抵抗するも虚しく、フェンリの姿はあっという間に消えた・・・







「・・・可哀相に」


 遠くお空を眺めながら、ユーラはポツリと呟く


「可哀相って・・・最後はお前もしっかり脅していたじゃないか」
「脅していたとは失礼ですね。私は、笑顔で『秘密です』と言っただけですよ。ヴィオみたいに睨んでいません」
「・・・はいはい」


 フェンリに向けた笑みと同じ表情を向けるユーラを、ヴィオルは軽くあしらいながらアジトへの呪文を唱える


「アジト・・・ですか?」


 小さく頷き、呪文を解き放ってからヴィオルはユーラを引き寄せる


「また邪魔が入ったら、たまらないからな」


 微笑しているユーラに軽くキスを落とし、2人そのまま秘密のアジトへと消えていった――――






終わり方微妙だな・・・と思いつつ
ちょっとしたお題シリーズ第2段でした!

いや・・もう・・・フェンリごめん!!!
扱い悪くてホントごめん!!!
これでも私は一番、貴方が好きなんですよ!!(・・・本当に

というわけで、女性向けまっしぐらですね。
またまた苦手な方、ごめんなさい!
でもほら、うちの女性向けはキスしかしてないから・・・
これ以上のことは、これから先も書きません!
これは約束します。
絶対にキスまで! しかもフレンチ or バード・キスまで!

その他の怪しいシチュエーションは、妄想してください・・・
たぶんこの二人は、こんなことしてるんだろうなぁ〜と・・・

てか、ユーラさん、一人称「私」だから、脳内変換で女だと思い込むのも可ですよね。
・・・ダメかな(なんか必死な管理人

まぁいいや!
次は普通のにします。
女性向けは2〜3作に1本ということで!

次回のお題もお楽しみ・・・に?
そういや、これもお題クリアしてるのかな・・・

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