注意

日記に載せていたプチ小説をまとめたものです。
なので、中途半端に終わっているものがほとんどです。
あと、書き方なども見直していませんので・・・
所詮は日記小説、と思ってご覧ください。



+ヴィネガ主体+




 時代はたぶん中世あたりだと思うが。
 あと北欧かその辺だと思うが。
 ファンタジーなので、関係なしっと・・・(以下敬称略!


 夜の散歩(というか食事を求めて)で、ヴィネガはある高い塔を見つける
 城(or屋敷)の一部であるその塔は、窓が一つあるだけ

 通称化け物であるヴィネガには、高さは関係ない
 窓越しから中を覗くと、ベッドが一つ
 そこに眠るのは黒いドレスを着た少女

 月の光の影響もあって、肌は青白く、死んでいるように見える
 引き寄せられるようにヴィネガは窓の隙間から中へと侵入

 血のように赤い口唇、深く閉じられた瞳
 触れた肌は冷たいが、微かに息づいている


 塔の入り口は鉄の扉で塞がれている
 見たところ、外側からカギがかかっていて、こちらからは出る事ができない
 閉じ込められている少女
 そっと首筋に手を触れ、温かい血脈を探る
 覆いかぶさるようにゆっくりと顔を落とすヴィネガ
 牙が少し触れた時、少女の身体が動いた


 いつもなら、そのまま気にせず牙を立てるのだが
 何故か離れ、少女から距離をとる
 目を開き、身体を起こした少女は、ヴィネガではなく、やや下向き
 一定の場所を見つめたまま問う


「誰か・・いるの・・・?」


 淡い碧の目はしっかりと開かれているのに、焦点が定まっていない


「お前は目が見えないのか」


 呟いたヴィネガの言葉に、少女はビクっと反応を示す


「・・・誰? どうやって入ったの?」


 ヴィネガは何も答えずに少女に再び近づく
 細い身体を抱きしめた途端、少女は腕を突っぱねて逃れようとする
 が、ヴィネガはさらに強く抱きしめる


「・・っ・・・私をどうするのっ!?」
「暴れるな。ほんの少し血をもらうだけだ」


 少女の黒い髪を肩から落とし、首筋を露にする
 ぐっと差し込まれる鋭い牙に、少女は軽いうめき声をあげた

 やがて離される身体
 脱力感に荒い息をしながら、少女はベッドに横たわる


「貴方・・は・・・何者・・?」
「さぁな」


 くぐもった笑い声
 少女は声の方に腕を伸ばす
 その腕を掴み、ヴィネガは細い手首にキスを落とす


「貴方が、何者でもいい・・・もしもバレずにここへ来たのなら、私を助けて」
「助ける?」
「ここから逃げたいの。私は―――


 ふいに誰かが塔を登ってくる気配
 ヴィネガは少女から離れ、窓へ


「また明日きてやる」


 それだけ言うと、ヴィネガは再び灰と化し、窓の外へと消えた


(2005.11.15)

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 場所は・・・アメリカっぽく、雑踏の多いごちゃごちゃした場所
 時代は現代に近いけど、ヴィネガがいるのでファンタジーに変わりはない



 昼下がり
 車、人々の行きかう公道
 ヴィオルは無表情で歩いている
 その腰には拳銃

 どこか目的があるわけではない
 だが、人の流れに乗って、その足は速い

 どのくらい歩いたか
 不意に耳元で聞きなれた声が響く


 ―――こっちへこい


 足を止め辺りを見回すヴィオル
 その横には、家と家に挟まれた、表の道とは正反対の薄暗い裏通り
 違和感を覚え、ヴィオルはその裏通りに足を踏み入れる

 公道の音が話すのに支障をきたさないほどの距離
 影が静かに動いた


―――ヴィネガ」


 現われた悪魔はヴィオルを見て、笑みを濃くする


「何の用だ。こんな昼間に出歩けるとは、随分と魔力が強くなったもんだな」
「何を言う。俺は別に太陽が出ていようがいまいが関係ない。それより、仕事だ」


 仕事、という言葉にヴィオルの表情が微かに動く


「こいつらの始末だってよ」
「お前の助けは借りない」


 投げられたリストを拾い上げながら、ヴィオルははっきりと言う


「お前が助けを必要としなくても、これはこれで俺の仕事なんでねぇ・・・」
「いつまで付きまとうつもりだ」
「お前が死ぬか、新たな契約を結ぶ者が現われるまでさ」


 ヴィネガはククッと喉の奥で笑う


「俺はお前と契約したつもりはない」
「あれは契約さぁ。あの時死にそうだったお前を救ったのは俺だ。つまり、お前の命は俺のもの。どう扱おうが俺の勝手だ」
「では何故すぐに殺さない?」
「せっかく助けたのに殺すわけないだろう。お前がそういう仕事をしているなら、それを利用するだけさ」
「・・悪魔め」
「現に俺のおかげで仕事が入り、そして金も入る。お前だっていい思いをしているだろう?」
「金など要らない。あの気持ちを抑えられるなら、そんなものは必要ない!」


 悪魔は笑う


「何を言っている。あれはお前だ。俺がすこ〜し力を貸して本当のお前を引き出してやっているだけじゃないか。受け入れろ、全てな」


 ヴィネガの身体が影と一体化していく


「待て!」
「仕事は夜だ。また逢おう、相棒」


 軽い風が吹き、影は形をなくした
 裏通りが元の静けさに戻る

 ヴィオルは持っていたリストを握りつぶした


(2005.11.15)

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―――よう」


 久しぶりに島へ降りてきた戦友、ヴィネガの軽い挨拶を横目で流す。


「相変わらず、訓練だけは怠ってないんだな」
「当たり前だ」


 ヴィオルは軽く剣を一振りすると、そのまま鞘に納めた。


「どうした。ヒマなのか?」
「べーつにー・・・ちょっと顔見に来ただけだ」


 腕を頭の後ろで組み、欠伸をしながら近づいてくる彼は、昔とそう変わっていない。


「なんつーか。お前さぁ、静かになったよな」
「静か?」
「そう。昔はもっと血に餓えてたっつーか、目がギラギラしてたっつーか・・・」


 自分の島であるかのように、中央で寝転がる彼の横に、仕方なくヴィオルも腰を下ろす。


「お前の恋人の影響か?」
「ユーラ? さぁ、どうだろうな」
「・・・お前の恋人、綺麗だけど普通じゃねぇ」


 不意に放ったヴィネガの言葉に顔を向けるが、彼は目を閉じたまま空を見上げている。


「ユーラだっけ。俺はあいつに勝てない。絶対にな」
「珍しい。戦う前から負けを宣言するのか」
「誤魔化すな。あいつはぁ・・・何者だ?」


 今度はしっかりと彼の紅い眼が開かれた。
 その横顔は、いつになく険しく見える。


「・・・あいつは、あいつだよ。まぁ、敵に回したくないのは事実だけどな」
「牙を剥き出す獣を軽くあしらう女神か?」
「的確な表現だ」


 笑いを含めながら言うヴィオルに、彼は自嘲する。


「やっぱ手出しできねぇーや」
「一つ教えようか?」


 ヴィネガの目がこちらを向く。


「ボロ負けして片足ついた俺に、あいつは何て言ったと思う?」
「・・・さぁ?」
「"私を信じてください―――"」


 今でも昨日のことのように思い出せる。
 手を差し伸べ、あの笑みを浮かべて、彼はそう言った。


「普通は信じられねぇーよな。自分をボロボロにした奴に、そんなこと言われてもよぅ」
「・・・そうだな」
「だが、信じなければ・・・お前はここにいないか」
「そういうことだ」


 差し伸べられた手を握り、立たされた俺の胸に彼は頭を寄せた。
 下から覗き込むように見上げられたその表情に浮かんでいた、あの笑顔
 ―――未だに、魅せられて抜け出せない


「でーもよ、たまには昔のように荒いお前と戦ってみてぇなぁ・・・」
「荒さだけが力じゃない。まぁ、いつでも相手はしてやる」
「お! じゃあ、今から!!」


 がばっと起き上がり、嬉しそうな顔を浮かべるヴィネガは、子供のように無邪気に見える。


「・・・言わなければよかった」
「後悔すでに遅しだ! おら、戦闘態勢!!」


 やる気満々の彼を前に、ヴィオルは仕方なく立ち上がると、前を見据え剣を抜いた―――


(2006.02.12)

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 ある領主が言った。

 お前の素顔を見てよいのは、自分だけだ。と・・・

 言われた者は素直に頭を下げた。
 そして渡されたのが、顔をすべて覆う真っ白で無表情な仮面
 空けられた目の隙間から覗く、本来持つ碧の瞳は、覆われた偽物の表情の下
 何を見つめていたのだろうか――――





「おい。こんな話知ってるか?」


 戦闘態勢を整え、まさに戦陣へ向かう途中
 隣を歩いていた彼が言う。


「何でも、今度戦う国の騎士団を率いている長ってのは、誰も素顔を見たことがないって話だ」


 不可思議な噂話に、俺は首を捻る


「・・・真正面から戦えば、素顔は見えるだろう」
「そりゃそうだ。つまり、戦って勝てた者がいないってことじゃねぇの?」
「あぁ。そういうことか・・・」


 顔を見ても自分が生きて帰らなければ、相手がどんな顔をしていたか、なんて話す事は出来ない。


「楽しみじゃねぇか? こう、血が疼くっていうかよ」
「そう感じるのはお前だけだ。まぁ、弱い奴より強い奴の方が相手のしがいがあるっていうのは確かだがな」


 適当に話を終わらせ、再び前を見据える。
 目の前には、戦場となる平野が広がっていた―――


(2006.02.24)

――――――――――――――――――



「よーっこいしょっと!」


 普段は滅多に行く事のない島
 でも、何か今日はその島の住人に逢いたくなって、ちょっと緊張しながらも、フェンリは島に降り立った。


「ん? あぁ・・・元気にしてっか、ガキ」


 島の住人、ヴィネガは降りてきたケマリを見て、軽く手を挙げる。
 彼自身は、フェンリの来訪にそれほど驚いていないようだ。


「おいらはいつでも元気な子! 久しぶり〜ヴィネガ様」


 フェンリ自身も彼に慣れてきたらしい。
 笑顔はぎこちないが、それでも以前のビクつきはなくなっていた。


「にしても、どうしたいきなり。お前から来るのは珍しいな」
「ん〜・・・何となくなんだよね。ちょっとお話したいかなーって」
「話ぃ?」


 トコトコと島を歩き、フェンリはヴィネガの膝の上にポンと座る。
 胡坐をかいているヴィネガの足は、フェンリにとってピッタリのスペースである。


「何ていうか、おいらさ。ヴィネガ様のこと、あんまり知らないなーって・・・ちょっと寂しいじゃん、そーいうの」
「・・・ガキの考える事はよくわからねぇな〜」


 ヴィネガの胸に寄りかかり、上を見上げてくるフェンリの顔を、彼は手のひらでベチッと潰す。
 途端、ぶぅ〜と口を膨らますフェンリに、今度は軽く頭を撫でてやる。


「で? 何の話が聞きてぇんだ?」
「えーっとねぇ。人生経験?」
「渋いとこ突くねぇ・・・お前。それはつまり、俺のことをオッサンと言いたいわけだな?」


 ヴィネガの赤黒い瞳が、ギラリと輝く。
 一瞬、ビクリと身体を震わせ、フェンリは彼から離れようとするが・・・
 逃がすまいと身体を覆うように腕を組まれ、暴れても暴れても逃げられない。


「ごめんなさいー!! 食べないでぇー!!」
「・・・誰が食うか!」


 ポコンとフェンリの頭を小突き、ヴィネガは肩を竦める。


「しゃーない。じゃあ少し話してやろうか?」
「ねぇ、ヴィネガ様」
「あぁ?」
「おいらね、その目・・・目のこと、聞きたい」


 フェンリが指しているのは、髪に隠れた右目
 そっと前髪を掻きあげ、久しぶりに外の空気に晒す。
 瞳のない、大きな傷跡だけを残した・・・戒めの目

 興味津々のフェンリに対し、まさかダメともいえず・・・
 ヴィネガは意を決する。


「・・・これはなぁ。とあるヤツを守るためにつけたんだよ」
「とある・・・ヤツ?」
「そっ。俺にとっては結構大切だったヤツ」


 にぃーっと笑ってはいるが、残された左目はどこか悲しそうに泣いている。


「その人は? いないの?」
「もういねぇ」
「・・・そっか」


 やや俯き、ヴィネガの心に共感するように、フェンリもどこか悲しそうな顔をする。
 子供ならではの順応性なのかもしれない。


「ま、それは別にいいんだ。でもな、俺はぁ〜・・・守るヤツがいねぇと・・・」


 前髪を落とし、開かれた自分の手を、ヴィネガはじっと見つめている。
 フェンリも覗き込むが、そこにはツメの伸びた彼の手しかない。


「ヴィオルは、守るヤツがいるだろう? だからアイツは強くなれた。自己を抑制できた・・・」
「ヴィオルの守る人って、ユーラだよね」


 そういえば、昔はヴィオルも怖かったと聞いた事がある。
 今の彼からは想像も出来ないが・・・
 それほどユーラの存在が大きいのか。


「俺もな、前はそうやって守るヤツがいたから自己を抑制できたんだ。でも今は・・・っと」
「ん?」
「わりぃな。これからちょっと約束があるんだ」


 膝の上からフェンリを立たせ、ヴィネガもその場に立ち上がる。


「続きはまた今度な」
「えー!」
「そう膨れるな。いくらでも時間はあるんだからな」
「ま、仕方ないかぁ〜・・・」


 うーん・・と大きく伸びをし、フェンリはヴィネガを見上げる。


「また来る!」
「おぅ」


 元気よく手を振って去っていくフェンリを見送り、ヴィネガは再び島に座った。
 何故か右目の奥が、痛いほど疼く・・・


「守る者がいなければ、自己を抑制できない・・・か」


 身体の中で血が騒ぎ始めている。
 大切な者を傷つけないために自らの手で傷つけた目が、また開こうともがいている。


「・・・くそっ」


 心から守りたい者など、そうそうに現われるはずがないのもわかっているが・・・


「お前が羨ましい・・・ヴィオル」


 ポツリ呟く言葉は、空に消える・・・
 何気なく空を見上げたその時、ソレは降り立った―――


―――・・・こんにちは」


(2006.02.28)

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