注意

日記に載せていたプチ小説をまとめたものです。
なので、中途半端に終わっているものがほとんどです。
あと、書き方なども見直していませんので・・・
所詮は日記小説、と思ってご覧ください。



+モンスター主体+




「一体何があった!」


 いつもの如く責務を終え、館へと戻ってきたウッドは目を見開く。
 入り口に倒れている部下―――かろうじて息をしている者から、既に事切れている者まで・・・
 ここまで多くの部下を倒せる人物など、リヴにも敵対するモンスターにも、心当たりがない。


「・・・ウッ・・ド・・・さま・・・・」


 足を失い、口元から血を流した部下の一人が、苦しそうなうめき声を上げ、ウッドへと必死に手を伸ばす。
 その手を握り、ウッドは男の口元に耳を傾けた。


「化け・・ものが・・・我々の、見たことも・・ない・・・化け物が・・グリ・・・フォン様・・を・・・・」
「グリフォン!?」
「早・・く・・・グリ・・フォン様の・・元へ・・・・」


 男はそこで、力なく意識を閉じた。
 胸の奥から疼いてくる怒りを押し留め、ウッドは館の中――――グリフォンの元へと向かった。


(2006.04.01)

―――――――――――――――――



――――貴様等は何者だ」

 鋭く怒りを含んだウッドの声が、開け放たれカーテンを揺らす室内に響き渡る。

 真っ黒な竜のような化け物は、金の瞳をギラつかせながらウッドを睨んでいる。
 その横には、竜をあやす様に佇んでいた全身を黒いコートに包んだ人物。
 ウッドの声に、フードの隙間からかろうじて見える口に笑みを浮かべ、ゆっくりと振り返った――――・・・


「これはこれはマダム様。ご機嫌麗しゅう・・・」


 喉の奥、かみ殺した笑い声をあげながら、恭しく(うやうやしく)その人物は頭を下げる。


「グリフォンを返せ」


 彼は既に気を失っているのだろう。
 竜の足元で、力なく横たわっていた。


「それは、出来ません。グリフォン様は、私共に無くてはならない存在ですので・・・」
「ふざけるな!」


 両手を左右に広げ、空中に現われた2本の鎌を掴み、ウッドは目の前の人物を鋭い視線で睨みつける。
 その視線にいつもの余裕は無く、相手の見えぬ力に気圧されているようでもある。


「くっ・・我々は今は争うつもりはありませんよ、マダム」


 さも楽しげに口を歪め、挑発的な態度でそいつは言う。


「貴様等の都合など知ったことではない」


 狙うのは竜――――


 瞬時に間合いを詰め、首筋に鎌を振り下ろした瞬間、いつの間にか竜の前に立ちはだかっていた黒の人物に軽く受け止められる・・・!
 特に力を入れている様子も無く、その人物は笑ったまま鎌を素手で受け止めているのだ。


 初めて、ウッドに汗が流れた―――――


「そう恐い顔をなさらないで下さい。何もすぐにグリフォン様を殺そうとしているわけではない・・・殺すのが目的でしたら、もう既に彼は死んでいるでしょう」


 ウッドの心情を知ってか、冷ややかな言葉は何の感情も無く吐き出される。
 息を呑み、言葉を詰まらせたウッドの鎌をするりと横に落とすと、その人物はグリフォンを抱き起こし、竜の背に跨る。


「どうせまたお逢いする事になりますよ・・・」
「っ・・待て!!」


 冷たい笑みを残し、竜は開かれた大きな窓から外へと飛び去っていく。
 己の無力に口唇をかみ締め、ウッドは真っ青に晴れ渡る空を見据えた――――――


(2006.04.02)

―――――――――――――――――



「時刻も時刻か・・・・・まさか私に独りで挑んでくる愚かな者がいるとはな」


 ―――――パーク建設予定地ブルー


 吹きさらしの平原の上、草より鮮やかな黄緑の長い髪がさらさらと流れる。
 巨大な1本の鎌を肩に乗せたまま、ウッドは目を細めて来訪者を見つめた。


「戦いを挑んだところで、どうせ命を落とすのはわかっている。俺もそれがわからないほどバカじゃない」


 相対して、悠然と佇むウッドを見据えるのは白銀の髪のムシチョウ
 手に剣をしかと握り、金の瞳が星の色に負けぬ輝きを放っている。
 気の張った固い表情だが、どこか切なげに見えるのは何故だろうか――――・・・


「・・・おかしな事を言うヤツだ。そこまでわかっていながら、何故私の前に現れた? その長い尻尾を丸めてさっさと逃げればよいものを・・・」
「それが出来るならとっくにそうしている。だが、今日はどうしてもあんたに聞きたいことがあったからな」


 不意にヴィオルは息を吐き、握っていた剣を腰に納めた。
 戦いを放棄し、負けを認め、両手を横へと広げる。

 行動の読めぬ目の前のリヴリーに、ウッドはさも可笑しげに笑い、同じく鎌を地面へと突き立てた。


「リヴリーがモンスターの私に聞きたい事があるとはな・・・ いいだろう、話くらいは聞いてやる」


 胸の前で腕を組み、見下す表情でウッドは先を促す。
 重い表情を崩さぬまま、ヴィオルは静かに言葉を紡いだ――――――





―――ある者を探している・・・」


 どこか重い意味を含んだ言葉――――
 ウッドは僅かに眉を上げ、何も言わず姿勢を崩さない。

 だが、それも――――・・・


「黒の集団・・・あんたは逢った事があるはずだ。一度、新聞になったから」
「・・・・・・黒、か」


 ヴィオルの手から放り出された1枚の号外新聞
 そのトップページは、WGPに現われた謎の生物を写し出している。

 思いもよらぬ言葉――――
 一瞬にして、ウッドの脳裏に思い起こされるあの忌まわしい出来事
 未だ所在掴めず、姿を消したままのグリフォン




 僅かの時、目を閉じた後――――・・・
 ウッドは再び、目の前の男を見据えた。


「私は知らない。奴等が何者なのか、どこにいるのか・・・」
「・・・そうか」


 話は終わった、踵を返しヴィオルはその場を立ち去ろうとする。


「待て」


 そう簡単に逃がしてはくれないか・・・・?
 足を止め、顔だけをこちらに向けた彼に対し、ウッドは違う答えを返す。


「その集団を探してどうする。貴様如きでは、傷一つつける事はできないぞ」
「・・・だろうな。あんたでさえも適わなかった、と一時話題になったものだ」


 間違ってはいない――――
 傷一つどころか、気圧されて動けなかった己がいる。


「それでも探すのは何故だ?」
「・・・救わなければならないヤツがいる。護らなければならないヤツも」
「適わないとわかっていてもか・・・?」
「逃げているよりはマシだ」


 その趣からは想像の出来ぬ静かな静かな彼の強さに、何故か笑いがこみ上げ、ウッドは真っ暗な天を仰いだ。


「面白い。まだ貴様のような者がいたとはな・・・!」





 一瞬の間
 気を抜いていたわけではない。 
 だが気付いた時にはすでに、ヴィオルの首元には鋭い鎌が回っていた・・・


「・・・っ・・!」


 1歩でも動けば、この鎌は確実に自分の喉元を切り裂くだろう。
 額に嫌な汗が流れていく―――――


「弱いな。・・・弱すぎる」


 背後から言い放たれる鋭く吐き捨てた言葉は、ヴィオルに対してというより、己自身に放ったものなのかもしれない。


「特別に貴様を我が館へ招待しよう。本当に救いたい者がいるのなら、大人しくついてくるがいい」
「・・・断れば?」


 鎌が喉元へ近づく―――つまり、そういう事だ。


「わかった・・・」


 軽く息を吐き、金の目を閉じて言う。
 空の闇は、より一層の深い黒味を増し始めていた―――――


(2006.06.11)

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 まだ夜も明けきらぬ時―――――

 ほんの一時の眠りを妨げぬよう、そっと身体を起こしベッドから滑り出る。
 開け放たれた窓は薄く透き通ったカーテンを揺らし、柔らかな風が夏の夜を優しく包みこんでいる。


 ベッドの下に脱ぎ散らかしてそのままの服を手に取り、軽く羽織ってからそっと彼を見る。

 こちらに向かって投げ出された腕
 深く閉じられた瞳と、シーツの上に流れ落ちる黄緑色の髪
 音もなく静かに眠り続ける彼は、あと数十分後に仕事へと向かうことになる。
 己自身、背を向けた殺戮の仕事に――――

 せめてほんの一時、安らかな時間を・・・・
 願わくは永遠に時を歩みたいと、切に思う。


 彼から視線を外し、そのままベランダへ出て空を見上げる。
 薄っすらと朝の光が漏れ始めた濃紺を残す丸い空
 それでも星はまだ尚、綺麗に輝いている。

 吹く風が羽織っただけの上着を揺らし、火照った身体は次第に熱を下げていく・・・・





―――そんな格好では、風邪を引くぞ」


 不意に真後ろから聞こえてきた言葉に振り向くと、室内へと繋がる大きな窓により掛かった彼と視線が合う。


「起きたのか・・・・?」
「あぁ。あまり驚かせないでくれ・・・目覚めた時にお前がいないと不安になる」


 彼の長い髪が揺れ、伸ばされた腕に引き寄せられる。
 優しく抱かれた後、耳を支配するのは彼の言葉


「私はいつでもお前をこうして抱いていたい。お前が私から離れぬように・・・・」


 見上げると触れる口唇
 離れる事などないと、互いに理解しているはずなのに・・・・
 それでも彼は不安げに強く抱き寄せる。


「俺は傍にいる・・・ウッド。お前が心配することはないから」
「その言葉が消えぬこと、私は心から願っている―――――





 明けに染まる夏の空――――・・・
 時刻は迫っている。

 そっと身体を離し、彼は切なげな笑みを残し去っていく。
 定められたモンスターとしての運命
 逆らう事もなく、ただ静かに受け止めていく。


 ――――願わくは永遠に時を・・・


 振り返って見上げた空は真っ白な光を放ち、また一つの時がゆっくりと始まろうとしていた――――


(2006.06.29)

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