注意

日記に載せていたプチ小説をまとめたものです。
なので、中途半端に終わっているものがほとんどです。
あと、書き方なども見直していませんので・・・
所詮は日記小説、と思ってご覧ください。



+フェンリ主体+




 ―――・・・ねぇねぇ、なんでそんなに大きいの?


 何となく尋ねたおいらに、アナタは自慢げに笑った。

 おいらにとっては、少し羨ましかったんだ。
 だっておいらには、ソレがないから・・・―――――――




「あ〜・・・たまのたまにゃー遊びに行こっかにゃー・・・」


 晴れた空を見上げ、島の上でゴロゴロしながら、それはもうダルそうに呟く。


「といっても、行くとこなんて・・・思いつかないにゃー・・・」


 仰向けになったり、うつ伏せになったり、服が汚れるのも気にせず、ただ転がっていく。


「ん? ・・・あるじゃん、あるじゃーん!! きっと楽しくなれる場所!」


 視界に入った桃の花を、どこか惹かれるように見つめていたフェンリの頭に、ポン!とある人物が浮かび上がった。
 その後の勢いはもう凄い!

 その場からガバッと起き上がると、身震いで土を落とし、帽子を整え、準備体操をし・・・


「いきなりだけど、いきなりだけどー!! お邪魔しちゃえー!!」


 くるっぽんっ!とケマリに戻ると、フェンリはある場所目指して呪文を唱え始める。
 楽しくなれる場所・・・あの人の所へ――――


(2006.03.04)

―――――――――――――――――



「とまぁそう言うわけでね。ディグ兄に渡したいものがあるわけよ」


 背後からそっと忍び寄る影も知らず、フェンリはディグに背を向けたまま島の端で何やらゴソゴソと物を漁っている。
 しかも今日に限って、何故かヒト型にはならず、ケマリのまま。
 一方のディグも、ブラックドッグのままなのだが・・・


「あれ〜? 見つからないー」


 ボンボンと物を後方に投げながら、フェンリは無心で探し物をする。
 そして、ついにその出来事は起こった。


 ―――ぱくん。


 一瞬にして視界が闇に包まれる。

 ここはどこ?
 あれ? 何で急にお空が暗いの?
 っていうか、頭に何か刺さってるんだけど・・・
 それに生暖かくてぬめってて・・・



 もしかして・・・?

 おいら喰われたああぁぁぁーーーー!?




 この間、約1秒の出来事である。


「ぎゃあああぁぁぁー!!」


 ぱっくりとディグに咥えられ、あま噛みと言えど、ブラドの鋭い歯はしっかり刺さっている。
 とにかくもう、何が何だかわからないフェンリは、自らふっ飛ぶ事も考えず、早口で呪文を唱えるのだった。


 ――脱出・・脱出・・・脱出!!!


「風よ吹き荒れろ! ストーム!!」


 ディグの口内で力強く発動された竜巻の呪文
 二人の悲鳴が調和する。


「どわわあぁぁぁーーー・・・・」
「ひやああぁぁぁーーー・・・・」





 風吹き止み、静かになった島には、頭から地面へと突き刺さっているディグと、木に絡まって身動き取れなくなっているフェンリ。

 一人佇む白ムシクイは、そんな二人をぼーっと眺めていた―――――


(2006.04.18)

―――――――――――――――――



「ユラ〜!」


 空はのどかな春の日差し
 珍しくムクチョウ姿のままで、木陰に身を休めていたユーラが顔を上げる。

 雲の先、1匹のケマリが円を描きながらこちらへ向かって降りてくるのが目に見えた。


「どうしました?」


 身体を起こし、羽を思い切り左右へ広げて、大きく伸びをする。
 時折吹く風が羽毛を揺らし、そのふわふわは見てわかるほど気持ちよさそうである。


「あ、ちょうどいい! あのねあのねぇー!」


 いったい何がちょうどいいのか・・・
 ユーラの前に降り立ったフェンリは、期待に満ちた目で小さなおしゃぶりを揺り動かす。


「ムクチョウって、おなかに袋あるってホント!?」


 唐突ながらそう聞いておきつつも、すでにある!と確信したまなざしで、フェンリはもこもこに膨らんだユーラの胸毛に飛び込んでくる。


「ちょっ・・フェンリ! くすぐったいからやめなさい!」


 ユーラの制止も聞かず、真っ白な羽毛の中に小さな身体が埋まっていく。


「袋ぉ〜どこー!?」


 もぞもぞと小さな虫のように胸毛を這い回り・・・
 そしてフェンリは目的の物を見つけた。


「あったぁー!!!」


 羽毛に隠された紛れもない袋
 ユーラの許可も遠慮もなく、フェンリはごそごそと袋の中に身を沈める。


「うにゃーあったかいー!」
「・・・フェンリ。このまま潰してあげましょうか?」


 微かに怒りの篭った声で言うが、目的を果たしたフェンリにはすでに聞こえていないらしい。
 ほわほわの羽毛に包まれながら、すでに夢の中へと堕ちていこうとしていた。

 この怒りをどこへぶつければよいのか。
 さすがにすやすやと眠る子供を起こす気にもなれない。


「まぁ、別に重いわけでもないですし・・・」


 これが重かったら即放り投げるところなのだが。
 幸いにもチビケマリのフェンリは、袋の中に入っていてもその存在はわからないほどの軽さである。

 再びユーラも木陰に身を落とし、フェンリ共々春の日の麗らかな眠りに誘われる。


 静かな空間
 静かな寝息

 ほんのひと時の、安らかな時間
 春の日の、小さな小さな物語―――――


(2006.04.29)

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「ふっふっふ・・・」


 何やら不敵な笑みを浮かべるブラド、ここにあり。
 それを怪しげな表情で見つめるのは、1匹のケマリ


「・・・ディグ兄。さっきからニヤニヤと怪しいよ」
「これがニヤけずにいられるかってんだ!」


 ニヤニヤ笑いがさらに深まり、やがて彼は大空仰いで大笑いを始めた。


「やったぁ! やったぞぉー!!!」
「・・・だから何が!!!」


 その大声に負けじとフェンリも声を張り上げる。
 足元でぴょこぴょこ飛び跳ねるケマリに、ひょいと視線を合わせ、ディグライはにんまり笑顔で呟いた。 


「いいか、よく聞け。ついに・・・ついにHPが1000HITを迎えたんだぁー!!!」


 腰に手を当て、彼は再び高笑いを始める。
 どうやらよほど嬉しいらしい・・・
 いつも以上にハイテンションのディグライに、さすがのフェンリも1,2歩後ずさっている。


「お・・おめでとう・・・」
「おうよ!!」


 が、ディグライのハイテンションも、子供ながらの嫌味ないフェンリの次の言葉で一気に急降下することになる・・・


「ねぇねぇ。でもでも、ディグ兄。おいらのHPは5000HITだよ?」


 さらりと滑り落ちた悪意のない言葉
 その瞬間、ディグライの身体は見事に天を仰いだまま凍りついた。


「・・・・・ディグ兄? おーい」


 ケマリ姿に戻り、パタパタと彼の顔近くまで飛んでは、小さな羽で仰いで見るが反応なし。


「生きてるー!?」


 今度はぴしぴしと叩いてみるが、それでも反応なし。


「ねぇー! おいらなんか悪い事言ったぁ??」


 角を引っ張っても、髪を引っ張っても、彼は一向に固まったまま反応を示さない。


「むぅ。でも、ディグ兄は凄いと思うよ。だっておいらのHPはもう長いけど、ディグ兄はまだまだ始まったばかりだもん」


 その瞬間、ディグライの氷がパキンと溶けた・・・!


「そ・・そうだよな! やっぱ俺ってすげぇよな!!」
「うんうん! これからも期待してるからねぇ〜!」
「任せとけぇー!!」


 そして再び、彼の高笑いが始まるのだった―――――


(2006.06.09)

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「そういえば、最近ふと思うのね」


 いきなり島を訪れて、いきなり居座ったかと思うと、こちらの事など気にもせずにフェンリは話始める。


「・・・お前、少しは俺が何をしているのか考えてから言えよ」


 深蒼のヴォルグ、ヴィネガは目の前に降り注ぐ数多のクモの足を受け止めながら嘆くが・・・
 傍観者フェンリは助けるどころか、話をさらに進めた。


「おいらの帽子、急に3本の毛が生えてたりするのよ。前はなかったのにさ」
「そりゃあ飼い主がお前を薬に漬けてるから・・・っと」


 眼前に迫ったクモの鋭い口をギリギリで避け、ヴィネガはそのままクモの下へと潜り込む。


「弾けろや・・・」


 尖った爪を腹部へ突き立て、あらかじめ唱えておいた雷を放てば、クモは内部から破裂し、四散する。


「いや〜んグロテスクー」
「・・・・・何がいや〜んだ!」


 両手を前にプリプリと首を左右に振るフェンリ
 クモの体液に塗れた姿で身体を起こしたヴィネガに、一瞬軽い殺意が芽生える。


「まぁまぁ、そう怒らないでよヴィネガ様」
「ったく。こっちはベタベタしてて気持ち悪ぃってのに・・・」


 粘膜のようにベタついた体液は頭からまともに降り注ぎ、髪から服までべったりと濡れている。
 しかもこれが雨如きでは、そうそう取れないから厄介だったりするのだ。


「で、話続けるんだけどぉー」
「まだ続けるのか! 薬漬けで解決したんじゃねぇのかよ!!」


 思わず突っ込みをいれる自分も、随分とまるくなったもんだと思う。
 まさかガキに振り回される事になろうとは、昔の自分には思ってもみないこと。


「いやさぁ。薬漬けはわかるよぉー リヴの姿の時、頭にぴょいんって毛が生えるしー!」
「わかってて自覚してるなら、いいじゃねぇか」
「でもねぇ? これ、帽子だよ? なんで帽子にもぴょいんって生えるのかなぁー」


 つまり。
 フェンリは、人間姿になった時自分の髪の毛が生えるならわかるが。
 何故、物である帽子に毛が生えるのか!ということが疑問らしい。


「それは・・・帽子もお前の一部ってことだろ?」
「おいらの帽子、生きてるの!?」
「そうじゃなくて。お前の成長に併せて、そいつも変化する優れものってことだ」


 物は言いよう。
 でまかせでもバレなきゃOK!


「なるほど・・・・だからおいらが大きくなっても、帽子が小さくなる事はなかったんだー! そっかー!!」
「・・・・お前、小さい時からソレ被ってるのか?」
「そだよ」


 あながち間違えじゃないのかもしれない。
 この世の中、何があってもおかしくないのだから。

 ・・・・・納得いかない事も多いが。


「ま・・まぁ、解決してよかったじゃねぇか」
「うん! ありがとぉーヴィネガ様v」


 満足したのか、見えない手を大きく振り、フェンリはさっさと去っていく。






 静かになった島で、ベタついた服を脱ぎながらヴィネガはふと思う。


 そういえば、どんだけ微塵に砕いても、10分経てばモンスターは何事もなく再生して去って行く――――と。


「まったく、おかしな世界だ――――・・・」


 考えるだけムダ。
 ヴィネガはため息一つ、雨の呪文を唱える―――――


(2006.06.25)

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